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代表理事 小竹 直隆

代表理事 ご挨拶

代表理事特別メッセージ

特別史跡「江戸城跡」等を地域として、
文化財等として、
全体的な整備に向けて検討を行うには

日頃より、当会の活動に多大なるご支援を賜り、誠に有難く、篤く御礼申し上げます。

さて、昨今、全国各地で天守や御殿の復元の動きや、それらの賛否の議論が行われてきた一方で、最近の傾向は、より成熟した議論も目立つように成ってきました。お城の再建は、観光のシンボルとして経済的効果が期待されている反面、歴史的考証の正確性も厳しく問われてきております。
世界に誇り得る日本のお城の再建は、歴史的文化的価値を守り継承していくためにも、先ずは、幅広い情報や知識を共有する必要性があるとの声が高まっています。

当会へのお問い合わせも増えており、改めて、「江戸城跡等における歴史的建造物の保存・復元など「整備」に向けて、検討を行うには」についての当会の考え方を述べさせて頂く次第です。
最初に、歴史建造物の整備とは、「 保存・復元・修復・活用・維持・管理の全てを包含する 」ものと考えます。

すでに、江戸城外郭の正門である常盤橋門の修復は着手され、1636年に開削された江戸城外濠の再生とまちの魅力づくりを実現するための取組も長年にわたり進められています。
江戸城の外濠再生懇談会は、外濠憲章を策定し、外濠ビジョン2036年(400周年)を視野に行政や民間、市民等により出来るところから着実に進めています。

当会は、江戸城跡などの学術・調査、研究を進め、その成果を広く社会に普及・啓発し、行政や関係機関に提言を行う等の役割を使命として、取組みを進めております。
それにより、文化観光立国を目指し、我が国の文化・芸術及び地域社会の振興に寄与することを目的として、国際都市東京の品格を創造してまいります。

今後共、ご指導、ご鞭撻を賜りますよう、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

 

2019年年5月好日
一財)江戸・東京歴史文化ルネッサンスの会
代表理事 小 竹 直 隆

 

 

Ⅰ.世界遺産に十分に匹敵するといわれる特別史跡・江戸城跡の歴史的建造物の整備の検討に向けた「世界的な文化遺産の保護」から観た課題:

 

江戸城跡は、皇居と城跡が併存し、世界にも類なく雄大で美しい城郭を形成しており、世界遺産にも匹敵すると云われています。現存する櫓、石垣や濠、城門や天守台の遺構など失われた歴史遺産の痕跡も窺われ一般公開されている皇居東御苑等は国有財産法により宮内庁が管理しています。

 

1.今日、行政を始め学識者や民間団体などが天守や御殿等の史跡の建造物復元等の整備を検討する際には、国内外の法令等により「歴史文化遺産の保護」等をすることが世界の共通認識となっています。それは、個々の文化遺産が人類の文化遺産であり、全ての人々が未来に向けて、感動と喜びを分ち合い、享受できることを目的としているからに他なりません。

 

2.国際憲章(ベニス憲章)では、記念建造物や遺跡の保全と修復の為の建造物の再建を理屈抜きに禁止しています。また、記念物は単体としてだけではなく群として考え、更に、歴史的関係性を重視すべきであるとしています。

 

3.一方戦争で消滅した文化財の再建には一定の配慮をしており、再建建造物群が世界遺産となっている例としては、ワルシャワ旧市街や首里城正殿が容認されていますが、いずれも第二次世界大戦で破壊されたものです。

 

4.ユネスコが、平和の構築と異なる文化の相互理解の尊重を目指している中で、人類共通の遺産(世界遺産)を守ることを目的に世界遺産条約が成立し(世界遺産条約1972年/1992年日本国批准)自国の世界遺産は当該国が責任を持ち保存していくことが求められています。

 

 

Ⅱ.国内法等から観た皇居東御苑に現存する江戸城天守台(遺構・特別史跡内)に、建造物の復元の検討を行う上での主な課題:

 

1.江戸城天守台の石垣への影響:

天守は高層建築であり、木造であっても重量が多大になり、基礎部分にコンクリートパイル等を打込むことが必要になることも考えられます。(ボーリング調査等は宮内庁の許可が必要)

堅牢と云われた熊本城の石垣は2016年4月熊本地震で脆くも崩れ、その修復には20年以上かかると言われています。360年以上の雨にさらされた江戸城天守の台座の問題は、この地震を契機に、改めて、極めてリスクが高い難題であるとの根強い認識が多数の学識者や専門家等から示されています。(文化財保護法 第四十三条(現状変更等の制限)第1項)

 

2.時代的整合性の検証と歴史的事実:

現存する天守台の石垣は万治度に造られましたが、一方、天守は造られておらず、歴史上、現在の天守台の上に建築されなかった為、「創作の天守」になる危惧があります。仮りに復元の検討を行う場合には、先ず、この「時代的整合性」をどのように理論構築をするのかが問われるところです。

保科正之公が、明暦大火(1657年)により焼失した天守を再建するよりも江戸の町民の救済や防災などの復興を優先したという事実、同時に戦いの世は終わり天守は時代遅れであると提言し、以降は、本丸の富士見櫓が実質の天守として扱われ、各諸藩でも幕府への遠慮から天守再建は行われなかったという事実があります。このような、徳川幕府の英断による「歴史的事実」をどのように受け止めて、後世に継承するのかも問われています。

江戸城跡は宮内庁の所有のほか、文化財保護法による特別史跡「江戸城跡」に指定され、皇居東御苑が都市計画公園、皇居外苑が国民公園となっています。

・宮内庁:国有財産法 第十八条(処分等の制限)第6項
・文科省・文化庁:文化財保護法 第四十三条(現状変更等の制限)第1項
・東京都:都市計画法 第五十三条(建築の許可)第1項
・国土交通省:建築基準法 第三条(適用の除外)第4項
・特別史跡:文化財保護法で指定した史跡の内、特に価値の高さが認められたもの 国宝と同格

 

 

Ⅲ.江戸城再生の今日的意義、江戸城全体整備構想の必須要件は、本格的な学術・調査、研究:

 

1.なぜ、今、江戸城再生なのかの今日的意義が求められています。その意義のもとに、前述の国内外の法令等を踏まえた個々の歴史建造物の整備の検討は、慎重には慎重を期し、丁寧な議論を行う必要があります。同時に、歴史的建造物群及び周辺地域の景観や環境等を含めた検討もなされて然るべきと考えます。

 

2.江戸城に関連する文化財は、江戸城跡のほか国史跡江戸城外堀跡、常盤橋門跡、国重要文化財外桜田門・清水門・田安門等があります。
歴史的建造物の復元の検討にあたっては、これら文化財も含めた江戸城跡の歴史的文化的価値を明らかにする必要があります。

 

3.従って、江戸城跡における歴史建造物の整備の検討に当たり、例えば、城門、櫓、天守、石垣や濠・土塁、本丸御殿や大名の登城経路など、その中で重要で必要なものは何か、学術・調査、研究に当たっては、「保存を第一義とし、復元や活用等の整備の検討」が焦点になると予想されます。

 

4.その上で、「活用に向けた全体整備の検討」を行うことにより、付加価値が高まり、理念的にも今日的意義が深まり、かつ、観光をはじめとする経済的効果も高まることになる、と考えます。即ち「歴史文化遺産の保護と活用」は先ずは、学識者や専門家などによる本格的な学術・調査、研究があってこそ、初めて次のステージに向けた具体的検討により、精度の高い結論に導かれるものと考えます。

 

 

Ⅳ.持続可能な文化観光立国を目指し、世界的な評価に資する江戸城及び城下町等の全体整備構想へ:

 

1.世界は、21世紀初頭から歴史的文化的創造による都市間競争(特に都心部)激化の時代に入り、地球規模の大交流時代が到来しています。
国連は2018年3月を契機に、短期的な経済的利益を得るための生態系や文化にマイナスの影響を及ぼす環境利用を抑制し、地域固有の生態系や文化の保全を通じて長期的な経済利益に繋げていくよう提唱する「持続可能な観光国際年」を定めています。
一方、都市東京の世界に類を見ない超少子高齢化社会の課題解決には、世界の注目が集まっています。

 

2.近未来を展望して世界に視野を転じる時、江戸城だけでなく城下町全体の整備構想の策定は、世界の人々が感動し、喜びを分かち合うことを目指す上でも、「世界的な評価に資する普遍的価値や本物志向の立場を明確にする。」という観点からも、2017年10月、「江戸・東京歴史文化ルネッサンス ビジョン・5カ年基本計画(案)*1」を策定し、現在に至っております。

 

3.このようにして、当会は、旧江戸城及びその城下町等の歴史的伝統と文化的価値に光を当て、学術・調査、研究を進めます。その成果や今日的意義をとおして、広く一般社会に普及・啓発し、行政や関係機関等に提言することにより、我が国の文化・芸術の振興及び地域社会のより良き発展に寄与することを目的として、国際都市東京の品格を創造して参ります。

 

 

次の*1・2・3 は、HPでご覧になれます。
*1 2017年10月「江戸・東京歴史文化ルネッサンス ビジョン・5カ年基本計画(案)」
*2 2018年 7月「江戸・東京歴史文化ルネッサンス5カ年基本計画(案)」
*3 2019年 3月「歴史まちづくり法の参画を視野にいれて」上記*2を検証する

 

以上